本会議 一般質問(5)

令和2年12月2日

百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録と各名称について

天皇陵と古墳とは別物

西村日加留:
いわゆる百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録されてから一年が経過しました。今回は、以前から私が疑問に思っている各名称についてお伺いします。
 例えば、私の地元にいただく仁徳天皇陵は、ここ最近、仁徳天皇陵古墳と呼ばれるようになっている。私は、仁徳天皇の陵と認識していますが、仁徳天皇陵古墳とすると、陵と古墳が同じ意味でないものが重なっており、日本語としても正しくありません。さらに、観光ガイドブックや地図、看板によっては、仁徳天皇陵古墳(大仙陵古墳)だったり、大仙陵古墳(仁徳天皇陵)、また大仙古墳のみなどと記載されているものもあります。地元市民からも否定的な声が私に届いております。
 名称が複数存在することは、混乱を招きかねないと大変危惧するところです。大阪の都市魅力の効果的な発信のためにも、名称は仁徳天皇陵と統一すべきと考えますが、府民文化部長にお伺いします。

岡本圭司 府民文化部長:
百舌鳥・古市古墳群は、千六百年にわたって守り伝えられてきたものであり、各資産は、その長い歴史の中で、陵名や墓名のほか、所在地名を用いるなど、様々な名称で呼ばれてきました。
 そのような中、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産への推薦に当たり、国や地方自治体及び有識者が各構成資産の名称について協議し、お示しの仁徳天皇陵につきましては、皇室が天皇の陵として祭祀を行い、宮内庁が管理している古墳という意味で、仁徳天皇陵古墳としたものです。
 今後とも、世界遺産百舌鳥・古市古墳群におきましては、登録の際の構成資産の名称により、幅広く情報発信を行ってまいります。

宮内庁の正式表記「Emperor」でなく「King」を使うのは大問題

西村日加留:
名称の問題に続き、私は、世界遺産登録に向けて作成された世界遺産推薦書に記されている表記について問題提起したいと思います。
 百舌鳥・古市古墳群の英語版パンフレットを拝見したところ、Kingの表記が目に飛び込んできました。私は、天皇はキングでも皇帝でもないと考えますが、宮内庁の見解は以前から存じており、英語訳にEmperorと使用しています。ホームページにもそのように表記されています。さらに、このたび、世界遺産推薦書最終版を見せていただいたところ、八、顕著な普遍的価値の言明の冒頭の総合的所見として、「百舌鳥・古市古墳群は、古代日本列島を支配し、東アジア諸勢力との外交に当たった王一族やそれに次ぐ有力者たちの墓群である」と書かれています。この断定した表記は問題です。中国の文献のみを参照して作成されたものだと推察できますが、我が国には、古事記や日本書紀、国造りの書物がたくさんあります。しかしながら、この分厚い推薦書には、名称で使われている以外に「天皇」の言葉は書かれていません。
 このことを国民も府民も知られていないということは、大問題であると私は思いますので、引き続き追及してまいります。
 今回の質問に戻ります。宮内庁が正式にEmperorと表記しているにもかかわらず、世界遺産としてKingとされている現状について、表記を正すべきと考えますが、府民文化部長の御所見をお伺いします。

岡本圭司 府民文化部長:
世界遺産推薦書につきましては、その文中において王という表現を用いることや、英語表記をKingとすることを含めて、地元自治体や有識者との協議を踏まえて定められ、閣議を経た上で政府がユネスコへ提出したものです。
 なお、推薦書は、文化庁とユネスコの各ホームページで公表されているところであり、今後とも、この推薦書の表記に基づき、世界遺産としての歴史的な価値を広く発信してまいります。

偏った説が記載された小学校配布の資料

西村日加留:
次に、教育長にお伺いします。
 こちらのパネルを御覧ください。
 こちらは、世界遺産登録後に堺市の小学校に配布されていたものです。古墳は、当時の有力者たちが、自分の力の強さをアピールするために造ったものと、非常に偏った説を表記されています。
 さて、ここで教育長にお伺いします。教科書にも載っているかと思いますが、初代天皇のお名前を教えていただけないでしょうか。また、お分かりでしたら、仁徳天皇は何代の天皇で、現在の今上陛下は何代目におなりになるか、教えていただきたいです。お願いします。

酒井隆行 教育委員会教育長:
突然のお尋ねでありますので、確かな記憶がございませんので、お答えは控えさせていただきます。

西村日加留:
初代、神武天皇です。そして、仁徳天皇は十六代天皇で、今上陛下が第百二十六代に当たられます。我が国は、神武天皇による国の創造から万世一系の天皇陛下をいただきます。そして、現在も百二十六代、今上陛下に続かれています。このことが、我が国のアイデンティティーになり、国体へとつながります。
 さて、府民文化部長に確認させていただきたいのですが、今上陛下もキングと認識されているのでしょうか、教えてください。

岡本圭司 府民文化部長:
世界遺産の登録のときの申請書には、Kingという表記で登録を政府のほうでいたしました。今上天皇をどういうふうに呼ばれるかというのは、私、今政府の見解を承知しておりませんので、これ以上の答弁は差し控えさせていただきます。

西村日加留:
このたびの世界資産申請書が、宮内庁に従うことができないのは非常に残念に思います。
 最後に、人様のお墓を遺産物にして、また宮内庁が定める名前、それを多数つくり、また英語訳も変え、教育も偏っております。世界遺産とは何だったのか、いま一度、私、今後も追及していきたいと思います。

次に、仁徳天皇陵に隣接して、府立大学大仙キャンパスがありましたが、中百舌鳥キャンパスへ移転したことに伴い、平成十八年度に閉鎖されました。
府では、この学校用地の一部を一般競争入札により平成二十一年度に民間企業へ売却し、現在、一般の住宅地となっております。売却当時、世界遺産登録に向けた取組が進められ、古墳群の一層の保存管理が必要とおっしゃっていた中、仁徳天皇陵に隣接する貴重な土地が住宅地として開発されてしまったことは、非常に残念に思います。どのような手続を経てこの土地を民間企業へ売却したのでしょうか、財務部長にお伺いします。

阿形公基 財務部長:
用途を廃止した土地、建物で、財産所管部局が活用しないものについては、まず庁内全部局への活用の確認、次に地元市町村への取得希望の照会などを行った上で、活用や取得希望のない場合は、一般競争入札により売却を進めることとしております。
大仙キャンパス跡地については、堺市が公共目的で活用することを希望したエリアは、堺市に随意契約で売却をし、希望のなかったエリアについて一般競争入札を行い、府議会の議決をいただいた上で売却したものであります。

世界に二つとない我が国の黎明期の歴史的風土を伝える地域

西村日加留:
堺市に売却した土地は、現在、約十年ほど放置されております。
そして、現在の天皇は、初代神武天皇から数えて第百二十六代天皇であり、堺市の丘陵には、今上陛下直系の御先祖である四世紀から五世紀の第十六代仁徳天皇、第十七代履中天皇、そして第十八代反正天皇の親子の天皇御陵が並んでおります。

これは、単なる遺物でも古墳でもなく、この天皇御陵の並ぶ丘陵そのものが、世界に二つとない我が国の黎明期の歴史的風土を伝える地域と捉えなくてはなりません。
この意味で、仁徳天皇陵に隣接する場所を住宅地とすることは、断じて許されないことだと私は思います。

さらに、この隣接地にとどまらず、歴史的風土保護の観点から、親子三基の天皇御陵をいただく丘陵を総合的にいかに整備するかが重要です。
今後の整備の対応についても慎重に検討するようお願いいたします。

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