令和元年10月10日
世界文化遺産への登録と、陵墓・古墳の保存管理について
西村日加留:
堺市、藤井寺市、羽曳野市にまたがる天皇陵、また古墳が本年7月6日に世界文化遺産に正式に登録され、日本の世界遺産としては23カ所目となり、大阪府では初めての登録になりました。しかしながら、私としては残念な気持ちでしかありません。皇室典範では、天皇、皇后、大皇太后、皇太后を葬るところを陵、他の皇族の墓を墓と定める。陵墓は宮内庁が管理する皇室の先祖のお墓です。遺産物でもない、人様のお墓です。それ以上でも、それ以外でもありません。そして、観光地やアトラクションではなく、神聖な場所であります。
さて、宮内庁が管理する皇室先祖のお墓を、なぜ世界遺産登録を目指したのか、改めてその目的について問うとともに、陵墓を含む古墳を今後どのように保存管理していくのか、担当副理事にお伺いします。
金森真澄 都市魅力創造局副理事:
世界遺産条約では、その目的の中で、文化遺産を損傷、破壊等の脅威から保護し保存することが重要であるとうたわれております。この目的に沿って、大阪が誇る歴史遺産、百舌鳥・古市古墳群の保護・保存を図るとともに、歴史と文化を生かしたまちづくりを推進するため、世界遺産登録に向けた取り組みを進めてまいりました。
本条約の趣旨に鑑み、世界遺産としての百舌鳥・古市古墳群を、末永く良好な状態で保存管理することは、大変重要な責務であると認識しております。
そのため、世界遺産登録に先立ちまして、文化庁、宮内庁や地元3市とともに、資産及びその周辺環境を含め一体的に保存管理していくことを目的に包括的保存管理計画を定めております。
この計画では、百舌鳥・古市古墳群を将来にわたり保存していくこと、世界の人々に伝えていくこと、資産の保護と地域社会の発展との調和を図ることというこの3点の基本方針を定めており、この方針のもと、古墳群全体の適切な保存管理を行っていくことになります。
今後とも、大切な資産を後世に確実に引き継いでいくため、文化庁、宮内庁、そして地元市等と連携し、世界遺産にふさわしい保存管理に取り組んでまいります。
陵墓の静安と尊厳を守るため、来訪者受け入れの対策が必要
西村日加留:
世界遺産登録により、確かに関心が高くなった今、陵墓を含む多くの古墳の保存管理が着実に進められ、しっかりと守られていくことを期待しています。
特に、仁徳天皇陵は、私の実家から3分ほどで伺うことができ、一日に二回以上は前を通るゆえ、世界遺産登録以降、仁徳天皇陵に日本国内外を問わず来訪者が増加していることは、私自身も確認しております。しかし、周辺には、皇室の御先祖のお墓であることや来訪者のマナーを伝える看板等がなく、実際、マナーの悪い来訪者がいるのも事実です。このような状況について、世界遺産に登録される以前から対応を進めておくべきでした。ましてや、仁徳天皇陵、陵墓は現在も宮内庁により祭祀が行われております。現状のままでは、陵墓の静安と尊厳が保持されなくなるのではないか、さらに周辺住民の生活にも支障を与えるのではないかと懸念しております。
そこで、陵墓の静安と尊厳を守るため、来訪者受け入れの対策が必要だと考える。担当副理事にお伺いします。
金森真澄 都市魅力創造局副理事:
陵墓は皇室の祖先の墳墓でございまして、また多くの古墳が地域住民の生活の場の中にございます。そうしたことを踏まえまして、来訪者の受け入れに当たりましては、資産の保存管理はもちろんのこと、地域住民の生活との調和を図っていく必要があると考えております。
そのため、来訪時のマナーの周知と来訪者の適切な誘導につきまして、地元3市とともに取り組んでいるところです。
具体的には、拝所での禁煙やごみの持ち帰り等につきまして、日本語版と英語版のホームページや、多言語のガイドブックにおいて周知しているほか、特に来訪者が多い仁徳天皇陵古墳におきましては、来訪のマナーについてボランティアガイドによる声かけを行っております。
また、周遊モデルルートの周知、案内板の設置、警備員の配置等によりまして、民家が近接している古墳の周辺におきましても、来訪者が迷うことなく周遊できるようにしております。
陵墓周辺におきまして、来訪時のマナー周知を一層充実するよう検討を進めるなど、来訪者向けの対応を今後さらに徹底し、地元市とともに資産の保存管理、周辺環境への配慮と、快適な周遊の両立を実現できるよう取り組んでまいります。
天皇陵に対する理解を深める取り組みを
西村日加留:
先ほど質問しました一部の来訪者のマナーの悪さは、天皇陵に対する理解が十分でないのが一因ではないかとも考えます。そのため、お墓--古墳が築造された時代背景についてもしっかりと理解し、伝えていただきたく思っています。
例えば、皇祖神武天皇より16代目仁徳天皇は、民家のかまどから炊事の煙が立ち上がっていないことに気づき、民は苦しんでいるだろう、民の暮らしが安定するまで税は課さないことを決断される。また、その間、みずからも貧困な生活をされたという記事--古事記の逸話、民のかまどでよく知られている。このような被葬者の逸話等に触れながら、日本の国柄を説明すると、1600年以上存在する仁徳天皇陵に関する来訪者の理解が深まるのではないでしょうか。
来訪者が増加している今こそ、陵墓--古墳に関する情報を丁寧に伝える必要があると思うが、どのように取り組まれているのか、担当副理事に伺う。
金森真澄 都市魅力創造局副理事:
先ほども申し上げましたが、陵墓は皇室の祖先の墳墓でございまして、多様な歴史文化資産とともに、地域の宝として守り受け継がれてきたものでございます。その周辺地域では、古墳にまつわるさまざまな言い伝えや歴史が伝承されております。
世界遺産への登録を契機に、今後は世界の宝として次世代に引き継いでいくとともに、古墳群の魅力を発信するため、さまざまな伝承を含めて古墳群への理解を深めていただくことが重要であると考えております。
そのため、府や地元市の博物館・ガイダンス施設が連携し、百舌鳥・古市古墳群に関する展示や、古墳に関するエピソードの紹介等を通して、来訪者の古墳群への理解促進に努めています。
具体的には、古墳と古墳時代に関する専門博物館である大阪府立近つ飛鳥博物館におきまして、百舌鳥・古市古墳群の企画展を開催し、古墳群を周遊するガイドブックで博物館を案内するなどの連携を行っております。
また、地元市の施設におきましては、世界遺産を構成する個別資産のガイダンスや、形象埴輪や武具、装飾品といった出土遺物の展示、古墳にまつわる伝説等の歴史文化の紹介などを行っております。
引き続き、訪れた方々に対しまして、百舌鳥・古市古墳群の歴史文化資産としての理解を深めていただきますよう、地元市とともに取り組んでまいります。
陵墓に対する敬意をもっていただけるよう注意喚起を
西村日加留:
登録直後に知事も気球を飛ばすようなお話をされていたと思いますが、現状はどうなったでしょうか。また、計画があるのであれば、上から見下ろすような行為は即取りやめていただきたいです。
そして、今議会の代表質問、一般質問でも、世界遺産関連の質問が何度か出ており、もちろん私自身も聞いておりましたが、余りにも不適切な答弁が理事者からも出ていたと認識しております。
例えば、百舌鳥・古市古墳群の価値をもっと知らせるなど、今の答弁にも出ましたが、資産--歴史的文化資産だとか、皇族のお墓は価値や資産等ではかるものではないですし、はかり知れるものでもないです。余りにも不敬であります。余りにも皇室への心、尊皇の心がない。
最後になります。
質問もさせていただきましたが、注意喚起をする看板をできるだけ速やかに設置していただきたいです。
御承知かと思いますが、仁徳天皇陵の前には大仙公園、大きな公園があります。その公園を利用する方、また利用された方が、そのまま短パン、サンダル等で、またペットを連れたまま自由なスタイルで訪れる状況です。その状況が毎日、SNS等で世界に発信されています。
陵墓には拝所が設けてあり、尊崇の対象であります。ですので、ルールがあります。そのルールを目で見て、理解できる看板等を適切な場所に設置していただくことを切にお願いいたします。
以上です。御清聴ありがとうございました。